さくら






ここは、とある山の中腹に咲き乱れる桜を見に来ていた。

その下には川がありその辺りにも桜並木がある。

明日から始まるロケ場所でもある。

2泊3日の予定で来ていた。




岩城は、出演者の人達に、

「香藤くん、付いて来なかったの?」

「香藤くんも付いてくると思っていた」

等と言われる度に、岩城は苦笑いをして適当に答えた。

監督、スタッフ、出演者達と花見酒を楽しんでいた。




皆から離れた静かな場所を探して、古い大きな桜の樹を眺めていた。
こんなに良い場所なら今度香藤を連れてやりたいと思う岩城だが・・・・
家に帰ったら、頭の痛いことが待っている。


そして、今日の出掛ける1時間前に香藤が帰宅して、の出来事を
思い出していた。


岩城は、朝早くから台所で、なにやら忙しそうに動き回っていた。


玄関先で、大きな物音がして岩城は驚いて動かしていた手を
止めて玄関に向った。

すると、香藤が大きな鞄を玄関のドアに衝突した音だった。

「どうしたんだ?」

「え?・・・岩城さん…もう起きていたの?」

「ああ」

岩城がまだ寝ていると思っていたので、香藤は不思議そうな顔をしていた。

岩城の仕事が押していてここ数日帰りが明け方や、現場の控え室で仮眠をとる等、

忙しい毎日を送っていたのだが、やっと目処がつき休みが取れる予定、
のはずが・・・。


「それより、大きな音がしたんで何事かと思った」

「あのね、家に入ろうと思っていたら、何か俺の前を通り抜けたんでよろけて
扉に鞄があたったんだ。」

「何だろう・・・猫?犬?・・・見なかったのか?・・・香藤、怪我はしていないのか?」

「あ、分かんない・・・あまり大きくは無かった気がする。 

怪我はしていないよ、安心して」

「ああ」






リビングのソファに大きな鞄をドッカと置きながら、鼻をクンクンとイヌの様にさせて、

部屋に微かに漂う匂を嗅いだ。

その姿を見て岩城は本当にこいつの嗅覚はイヌ並以上だと思い、くすくす、笑って

香藤の頭をくしゃくしゃと撫でた。

「何が可笑しいのさ 俺、何かした?・・・」

「いいや、ただ・・・ お前は何時も元気だなって思っただけだ」と

岩城は言いながらも、何だか楽しそうに笑うから、まじまじと岩城の顔を見ながら

釈然としない眼差しをしていた香藤だった。

部屋に残っている微かな匂いが気になって、

ダイニングテーブルの上には、幾つかのタッバーが置いてある。

「岩城さん、あれ、何なの? 」と指を指しながら訪ねる香藤は気になって

仕方がない風である。

「あっ、今日は仕事スタッフや、出演者の皆と明日から2泊3日の
撮影とお花見を兼ねてあるんだ、今、桜が満開近いから、
と早い目に出かけるんだ。
それで、皆で、少しずつ何かを作って持ち寄る事になったんから…」

岩城は、幾つか作った料理をタッバーに詰め込んでいた。

その言葉に香藤は、

「おれも、付いて行くからね」

「・・・なつ・・・何で、お前が付いて来るんだ? 徹夜明けだろう寝ないと・・・」

岩城の言葉が言い終わらない内に、香藤は岩城の言いたい事が分かって
いたので直ぐに、

「俺、心配だから付いて行くね。」

「だから、何で心配なんだ! もういい年をした俺が心配
される、事はないぞ。」と言い切る岩城だった。

そんな事でめげる香藤では無いので岩城は、頭が痛くなってきた。

岩城はトイレに逃げ込んで考えた。

そんな岩城の後を付いて、トイレの前でなおも言い募る香藤だった。



あのてこの手でと考えたが・・・やっぱり一番手っ取り早くと、
ドアを開けながら岩城は、奥の手を使った。

「なあ、香藤この仕事が済んだら、4日間休みだから、お前の行きたい所や
何でも聞いてやるから・・・ただし、俺に出来る事だけだど、余り無茶は
出来ないからな!」
念を押した岩城だが・・・・。

そんな念なんて聞いていない香藤であった。
岩城の何でも聞いてやるの言葉に、香藤は既に、あらぬ妄想へと・・・・

そんな香藤の顔を見て岩城は、少し早まったかと思っても多分後の祭りである。
惚けた顔をしている香藤を尻目に、岩城はさっさと出かけて行った。



そんな出来事を思い出して岩城は、家に帰る頃には忘れていて欲しいと
願う岩城であった。



  大変つまんない代物ですが・・・。裏ページを作りますねその後なんて
  如何なものでしょうか?
  しばし、お待ちくださいね。(誰も待っていないって!解らないやつだな・・・)

                                       その後予定?
                               「そのあと、夜桜・・・」です。
                                続きますが宜しければ、読んで
                                見て下さい。「夜桜
2006/3/25 。   

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