約束

この前に、お袋から電話が有りいつ頃千葉の実家に帰れるのかと・・・催促をしてきたのを
忘れた訳ではないのだが・・・いくら今仕事が無い俺でも・・・だからこそ・・・帰りにくい・・・・・
ずるずると、時間を延ばしていた。
で、今日行く事になってしまた。


「冬の蝉」の公開までもう少し時間が掛かるし、その結果で俺の役者としての
評価が問われるまるで・・・裁判の判決を待つ気分でもある。
確かに前評判も良く、ちらほらと仕事の話もきていると、金子さんからも聞いている。
社長も、何となく俺の仕事の話を慎重に考えてくれていると、今までも、筋肉番付や
クイズなどで、俺をテレビ出演に何回かあった。俺の顔を売るためにと・・・・・・・
映画撮影中でも取材などで俺も、インタビューなんかも受けたし・・・・・・・
俺なりに、後悔していない。
冬蝉は、俺にとって、誰にも渡したくない役だから・・・・あの時は岩城さんにも辛い思いを
させた自覚はある。
冬蝉の撮りも終わり・・・俺は今、専業主婦?・・・状態なのだが・・・・これでも中々忙しい・・・
朝、旦那?さんを送り出し・・・キッチンで後片付け、洗濯・・・掃除・・・買い物とか
割と忙しい毎日を送っている。

岩城さんもたまに、俺の実家に行って気晴らしでもしてくればいいと言ってくれる。
そう・・・岩城さんが帰てくるまでとか思うが・・・腰?足が動かない・・・・。
岩城さんは、「冬蝉」の時から掛け持ちで忙しくている。
今は小野塚の兄役だし・・・・あいつにはとことん振り回された様な気がする、宮坂にも。


・・・あっそうだ、今夜、岩城さんを迎へに行かないといけない。
確か明日、岩城さん休みのはず・・・・そのまま俺の実家にでも行こうか・・・・




スタジオまで迎えに行くと目敏く小野塚が俺を見つけからかう。
「おっ!香藤お出迎えか? 岩城さんならもう直ぐ終わるはず。」
「悪いか?俺が来るのは・・・」
「この後、何か在るのか?俺も多分岩城さんも腹が空いていると思うから晩飯食べに行かないか?」
「ダメ、ダメ、これから、俺の実家に行くからまた、今度な」
「ふーん、何かやらかしたのか香藤?」
「なんで?そうなるんだー!たまに良いだろうがぁ・・・」
俺をからかって遊ぶのは止めろと言っても聞く相手ではないので、無視していると
岩城さんが、悪いなって顔で俺に合図をくれる。良いんだなぁこの感じが堪らない。
「お疲れ様でした、岩城さん」と直ぐに声を掛けたのは俺と小野塚同時だった。
なんかムカつく俺。
「お疲れ様小野塚君、香藤すまん、ずいぶん待たせたかな?」
「そんなに待っていないよ。こいつと話していたから、気にしないで」
俺と岩城さんの顔を見ながら・・・また何か言いたげな顔をしているから、俺は岩城さんの
腕を掴み早く行こうと先を急ぐ。



呆れた顔で俺を見る岩城さんを車に乗せて、千葉までのドライブデートだ!!
「早く・・・お袋が待って居るから・・・ね」
と何でも無いように話す俺に、岩城さんが何か言いたげだったが早口に
お袋の話しを持ち出した。

「ああ・・・悪いな・・・何時もお前にばかり運転させて・・・・」
「なに、言っての、岩城さん疲れているでしょう・・・この間から深夜まで詰めていたでしょう。
だからね、・・・久振りの休みでしょう明日は、だから、お袋が来なさいて、
前から言われていたんだ、俺一人でも良いんだけど、岩城さんの顔も見せたいし・・・
嫌なら別の日にするけど・・・」
「嫌な訳ないだろう・・・お前の大切なご両親だ!・・・俺が行っても良いのか?」
「当たり前じゃん、お袋や親父は、息子が増えたて、喜んでいるからね」
「でも・・・ホンと久しぶりだな、お前の親父さん達に会うのは・・・・」
「うん、そうだね、冬蝉の撮影前だから・・・、俺、・・・・随分親父達にも心配させたから・・・・」
「元気な顔を見せるのも、親孝行だ・・・香藤」



「ただいまーぁ、お袋ー」
「お帰り、洋二、岩城さんいらっしゃい、早く入りなさい、疲れたでしょう」
「お邪魔します、俺まで来てしまって・・・」
廊下を歩きながらも嬉そうに話すお袋、連れてきて良かった俺。
「何言っているの岩城さん、遠慮はいらないからね、お袋そうだろ?」
「ええ、洋二が何時もお世話になっているのに、岩城さん、余り気を使わないでね
気軽に来て貰えるのが嬉しいから」
「ねえ、岩城さん、俺言った通りでしょう」
「ああ、ありがたいと思う・・・」
何回か来た事があるのに未だに、ぎこちない岩城さん・・・・可愛いと思う俺
リビングで寛ぐ岩城さんと俺、岩城さんはお客さん扱いはしないでとの事で、
このリビングで親父の帰るのを待つ事にした別に俺の部屋でもいいのにと思うが


「お袋、それより親父は何時頃帰ってくるの」
「多分7時過ぎに家に着くはずだけど」
キッチンで良い匂いが仕出したので、俺の鼻はビクビクと匂いを嗅ぐ、あれこの香りは・・・
「この香りは、するもん汁? 懐かしいなー」
ふと横に居る岩城さんは?とした顔で俺に聞く。
「するもん汁は方言だよ、いわしのすり身の事なんだ、野菜も沢山入って美味しいから」
「なるほど、楽しみだ、お袋の味だな!香藤」
「うんそうだね、九十九里浜で沢山いわしが獲れるから、でもその家庭でみな味が違うよ」
「そうだろうなぁ、車麩もそうだからその家庭の味が違うから、子供の時から食べてる
味は懐かしいだろう」
「車麩?て麩にも色んな名前があるんだ・・・その地方で色んな麩が有るんだね。」
「そうだな・・・」
岩城さんが急に黙って何かを思い出そうとしている・・・・きっと・・・そうだね。


「ただいま、洋二達来ているのか?」
「お帰りなさい、お疲れ様でした。来ているわ」
「お邪魔しています」
「いらっしゃい、岩城さん、洋二が迷惑掛けていませんか?」
「いえいえ、何時も助けてもらっているのは、俺の方だから・・・・」
テレながら言う岩城さんの顔可愛いと思う俺。
「今夜はゆっくり出来るのかな?」
「はい、そのつもりです」
時間の過ぎるのも忘れ久しぶりの家族爛々の一時を嬉しく思う。



程よく酔った岩城さんと俺の部屋のベランダで、酔いを醒ましてる。
頬が少し紅色になって、凄ーーく、艶やかでぐらぐらきそうだ。
秋風に吹かれ顔に掛る髪を掻き上げ、岩城さんは俺に言った。
「なあー香藤・・・何時の間にお袋さん達と約束していたんだ?」
訪ねながら、俺の方を見る岩城さん・・・我慢出来ない・・・と思う心を・・・在るだけの理性を
掻き集めて何でも無い風に装う俺・・・・。
「えっ?・・・と・・・」
何だろう?・・・確かお袋とか、約束?・・・聞こえたよなぁー・・・・と考えていると、
少し冷たい岩城さんの視線と声音が・・・・
「人の話聞いていなかったのか?香藤!」
「えっーーと・・・・約束?だよね」
「ああ」
「俺、今プーたろうだから・・・こんな時にでないと余り来られないでしょから、て、
言われたんだ、だから今度岩城さんが休みになったら、行くからて言っていたんだよ」
「良かったな、香藤・・・約束守れて・・・・」
「うん、岩城さんのお蔭だよ、ありがとう、一緒に来てくれて・・・親父も喜んでいたから」
「なあー、香藤・・・お袋さん大切にしろよ・・・親父さんも・・・」
俺に話しながら、遠くを見詰めた岩城さんの横顔・・・どこか少し・・・・・
「ねえ、岩城さん?・・・冬蝉が公開になって落ち着いたら、新潟に行こうね約束だよ」
「か、とう・・・」
岩城さんの瞳が涙で潤みだす、詰まり掛けた岩城さんの言葉を俺は思わず塞いだ。
約束だよ、忘れないで岩城さん・・・・そして、愛している。ずーと何時までもね。




      此処まで読んで頂きありがとう御座いました。<m(__)m>
      何時もながらの駄文です。懲りないね・・・・ホンと文章力も表現力も無いのに・・・・
      下手のよこずきで・・・笑って許して下さいませ。(^^ゞ
         この話に出てくる「するもん汁」するもんじるは、私babamamaが
     小学校の臨時で給食を作りに行ったときたまたま,「今月の美味しいね献立にあったので
        直ぐに春抱きを思い出し、香籐くんを実家に行かせてみたくなりまして。
       千葉県は北海道についで農業が盛んなそうです、落花生もありますね。
    その日ではなかったのですが・・・献立は、さばのピーナツ揚げとキヤベッと
            こんにゃくの味噌和えとこのするもん汁でした。
                    

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