―その手をいつまでも・・・―




離したくない・・・いつもこの腕の中で・・・その温もりを抱締めていたい。

そんな思いを残して・・・・・・抱き込んでいた愛しい人の顔を見詰めた。

穏やかな寝顔と耳を側に寄せないと聞えないぐらい静かな寝息。

昨夜の情事を色濃く残しているその身体から僅かに甘い香たつ。





離れがたい気持ちを押しやり、静かにベッドから降りる。

仕事に出掛ける準備に取り掛かる。







静かに門前に車が停車すると、香藤は大きな鞄を持ってその車に乗り込んだ。

「おはようございます。香藤さん。・・・そ・の・・・」

何時もはクラクションを鳴らすか、玄関先まで迎えに行かないと中々出てこない

香藤に少し戸惑っている、金子に尽かさず香藤は金子の言いたい事が判るから、

「おはようございます。金子さん、朝早くから俺が外で待っていたから、

気になった?」とおどけてみせる香藤。

「え?・・・そんなことは・・・」

「いいよ、俺が外で待つのは岩城さんが居ない時ぐらいだからね」

車を発進させながら、それでも不思議に思う金子であった。

遡ること数週間前に事務所で今後のスケジュールを調整している時、

香藤が、「金子さん、出来れば・・・」と声音を少し落としてその先に続けられる

言葉は、金子にも判っていた。

「ええ、大丈夫ですよ、その日は空きですから」と告げると、満面笑みが咲く

金子は内心やれやれと何時もの事ながら・・・と、この間は岩城さんの誕生日で、

今回は・・・バレンタイン・・・判っていますが、やっと仕事の話もそこかしこから

オファーが掛りだした常呂なので香藤に内緒でその日をOFFにしていた金子であった。

それを知った香藤は「流石、金子さん、ありがとう」と嬉しさを隠さず告げた。

「金子さん、余裕は出来るの?このスケジュール・・・キツイかも・・・」

「大丈夫です。最後の2日は天候を予測しての予備日ですから」







香藤が仕事に出かけて、数時間経って  もそもそとベッドで動く。

腕を伸ばして傍らに居るはずの温もりを探す。

寝起きでまだ覚醒していない頭は、無意識にベッドの上を掌が彷徨。

『・・・・???・・・ぁ・・・』掠れた声に喉がひりつく。

昨夜の事が想いおこされる。

「あいつ何も言わず・・・行ったのか・・・」と小さな声で呟く。

ベッドから降り様とすると腰が重い。




下に降りリビングには香藤のからの、メモ書き残されていた。

        岩城さんへ

 おはよう、よく寝ていたから起こさずに仕事に行ってきます。

腰辛くない?また無理をさせたから、ごめんね。

岩城さんの仕事は午後からだったから。

俺は予定日には帰れるから、(多分)軽い食事出来ています。

暖めてね。

PS

大好きだよ、岩城さん?

「あいつ言いたいことだけ書いている・・・」

書かれている内容は簡単だが、最後の大好きだよ……

俺も…、香藤…起こしてくれれば良かったのに、変な気を使わなくても・・・

何時もは仕事にと追い出さないと、行かないのに・・・・

なんとなく寂しい感じがする岩城である。







某有名な化粧品会社からの依頼で、女性の化粧品での相手役も兼ねて、

初夏の新商品男性化粧のCM撮りとポスター撮りのためにとある無人島に来ている。

「冬の蝉」で人気がうなぎのぼりで、スケジュールも目一倍詰まりかけている

香藤の空きを狙って進められた。





好天に恵まれ予定日数3日目も無事過ぎ様としている。

撮影最終日、日焼け止めのCM撮影のため、クルーザで女優の背中に日焼け止めを付ける

香藤の掌が女優の綺麗な背中を優しく触れて、ビキニの紐を香藤が唇で解きクリームを

延ばしていく、引き締まったウエストまでを無事撮り終わった。

(数ヶ月後、このCMが放映された時自宅のリビングで寛いでいた岩城がむっとした事は確かな事です。)

撮影監督やスタッフから労いの声が掛る。

「皆さん、お疲れ様。思っていた以上の物が撮れたよ。この後は水上スキーでも、如何ですか? それともスキューバダイビングでもしてみますか?

帰り時間まで・・・? おや?一人だけ早く帰りたいと顔に書いている

方がおられますが」と言いながら香藤の方に目線を指している監督に

クルーザに乗っている皆が一斉に香藤に目を向け笑い声が響く。

「えっ?・・・なっ、何で俺の方を向くの?」

「早く会いたいんでしょ?」

女優の寿加奈も笑いながら加わる。

「あっ・・・ハハハァ、もーう、揄ないで下さい!」

頭を掻きながら照れる香藤がまた苛めがい?からかう、スタッフ達であった。









やっと一人になれると、香藤はふっと溜息をした。

そんな顔をしていたのかと自分の顔を擦る。

確かに・・・でも仕事はいい物が撮れたはずと監督も言っていたから。

忘れていた事を思い出す。

「間に合うと良いのだが・・・」









東京国際空港に降り立った香藤と金子の前には岩城の姿が。

驚きで声も出ない感じの香藤に岩城は「清水さんが、迎えに行くのでしたら

私がと言ってくれたんだ。時間に余裕がありますて」

「…こうゆう事は、俺の・・・はずなのに・・・」と

香藤は嬉しさ半分、複雑さ半分で何とも言いがたい顔をしていた。






清水の待つ車で香藤の事務所まで送られて行く事になった。

「香藤さん、金子さんお疲れ様でした。」と言う清水に

「清水さんありがとうございます。でも…」

「ええ、私もこの後は何も無いので大丈夫ですよ。」

腕時計を見るとまだ午後6時少し回った時間。

ナビ席に金子、後ろ座席岩城と香藤を乗せて出る。

渋滞は免れ流れに乗って快適に進んでいく。












無事に家路に着くことが出来た岩城と香藤は、玄関を入って直ぐに

香藤に抱寄せられて岩城の唇を塞いだ香藤に岩城は目を瞬かせた。

香藤は久し振りに味わう岩城の柔らかい唇を開かせていく。

お互いが酸素不足で息を継いだ時、岩城の頬が仄かに色づいた。

ことに気を良くした香藤はこのまま雪崩込もうと企んだが、岩城の睨んだ顔で

「ばか・・・いきなり・・・」と言い掛けた岩城に香藤は言い募った。

「だって…岩城さんの顔を見たら我慢できなかったんだもん!

家まで我慢したご褒美くれても良いでしょう? 空港で岩城さん

見た時どれだけ抱きついて・・・」

「ばか、空港でなんて事を・・・お前は」

「ばか、ばか、言わないでよ、岩城さん、だから我慢したて言ったでしょう!」

「うっ・・・悪かった。すまん香藤」

「良いよ、判っているからね、その代わり明日はバレンタインデーだから、

今夜は前夜祭と事で、頂いても良いでしょ?」

「俺は…チョコレートは明日だ!」

「チョコレート?…あっ俺も買ってきたよ、鞄に入てるからね・・・て

違う〜〜ぅて、岩城さんを俺が食べても良いかな――て、聞たんだて」

「明日まで待てないのか?お前は・・・」

「そんなぁー、家まで我慢したのに…待てる訳がないでしょう!」

きっぱりと言い切る香藤の言葉に詰まりながらも何とか誤魔化そうと思案する

岩城であったが・・・

そんな事にはめげない香藤はあの手、この手で岩城を頂く事が目的なのです。

このまま行けば前夜祭?から当日のバレンタインデーに突入仕掛けない勢いが

感じられて、岩城は少し後ろに怯む。








寝室では、やはり抱締められ、甘い喘ぎ声と卑猥な音が響きわたっていた。








岩城の身体を抱き上げて二階に連れて行った香藤は、ベッドに岩城を寝かし

覆い被さり、岩城の唇を塞ぐ、敏感な場所岩城の弱い所など知り尽くした..

香藤は攻めていく。

唇から、首筋、鎖骨、腕の付け根、そして岩城の胸の赤く色づき始めた

小さな突起、

少しの愛撫で起ち上がる小さな突起を口に含み甘噛をする。

香藤は左手でもう片方の突起の先を摘まんでは弾き繰り返し刺激を与えていく。

右手は岩城の滑らかな肌理の細かい透きとおる肌をわき腹からウエスト、

そして岩城自身に触れ、優しく掌に包み込んで、上下に動かす。

絶えず甘い声を出す岩城。

「あっ・はぁ―っ・ああぁぁぁ―・・・・」

堪らず身を捩り逃げ出しそうになる岩城を香藤は膝で押さえ込んでいた。

岩城自身の先を弄りだす透明な先走が一気に溢れ出す。

それに気を良くした香藤は口に含んで舌を絡ませた。

「うっ・はぁああ―うんぁぁぁ・・・」

我慢できずには白濁を香藤の咥内に吐き出した岩城のそれを飲み込んだ。

肩で荒い息をしている岩城の顔を見詰めて香藤は満足そうに微笑んだ。

「い・わ・き・さ・ん?」

「・・はぁ…はぁ…うん…?…」

「まだまだ…これからだよ、岩城さん、判っていると思うけど…」

岩城の密かに息づく蕾に香藤は唾液を絡ませた指を擦りだした。

「うっ・・・ぁ・・・・・」

硬い蕾が柔らかくなるまで解す、ゆっくり時間をかけて  

そっと浅い目に指を差し入れるときゅっと締め付けられた。

「あぁ・・・はぁ・・・んうぅ・・・」

岩城の甘い声と仄かな香に眩暈がしそうと思う香藤だ。

だから、一度抱き始めると止まらなくなってしまうのだ。

そんな事を言うと岩城は必ず俺だけの責任にするなと、何時も言われる。

岩城の内肉が熱く蠢く、それを掻きえ分けて奥へと岩城の良い所へと進めて行く。

反り返り浮き上がる腰を宥様に岩城の唇を塞ぎ深く岩城の咥内で舌を絡めあうと。

岩城の眦にうっすらと、快感の涙が滲んでいるその顔は壮絶に色っぽい。

岩城の蕾の奥からぐちゅぐちゅと卑猥な音が出始めると、香藤も我慢の限界で,

何時の間にか増やしていた指を引き抜くとぐっと蕾が萎む其処に香藤の熱い楔を

宛がいゆっくり挿入していき、馴染むのを待って抜き差しを始めると岩城は腕を

延ばして、縋り付く物を求めて彷徨、香藤は直ぐに手をやり岩城の掌を掴む。

「あっ・・・はぁぁぁ・・・」

「い・・・岩城・さん・凄いよ・・・岩城さんの・・・内・・熱く・て・・・」

絡めた掌にも汗が滲んでくる、二人に身体に噴出した汗が飛び散る。

激しい抜き差しに岩城も白いシーツに足のつま先を立てていた。

「・・あ・・ぅぅぅ・・・んん・・・」

岩城が先にいくと香藤も岩城の内側に熱い白濁を吐き出し岩城の胸に倒れ込んだ。

二人が荒い息が整うまで繋いだ手はそのままだった、それを香藤は嬉しそうに

自分の口元まで運び岩城の手の甲に唇を落とした、何時までもこの人の手を

離したくない・・・離れていても心に(精神)で何時までも離れる事が無い様にと

握り締めていたいそれはきっと岩城も同じだと思えるから・・・この先何があろう

とも離す事のできないものだから。







翌朝、目覚めたのはお昼少し前だった。

甘い、甘い、チョコレートより甘く熱い時を過した二人でした。









何とか出来ました。(爆)


                   2006/2/14


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