秋の夜長


9月の連ドラに、…仕事に追われ…また此処最近落ち着いている暇もなくてやっと、

夕方からOFになり、少しだけ気持ちの切り替えもできる。




岩城は帰宅後直ぐに窓を開け空気の入れ替えをし、たまっていた洗濯ものを、

取り敢えず洗濯機に掘り込んだ後、二階に上がり寝室の窓も開け部屋着に着替えた。

其のまま、自分のベッドに腰を下ろし鞄から携帯を取り出し着信歴を確認すると、

何時もの如く、香藤からの『岩城さんに会いたい。声を聞きたい―!! 今日は多分遅くなるかも』とメールが届けられていた。

岩城は時間を見つけては、メールをしてくれる香藤に感謝している。

自分は、余程のことがないとメールなど送らないから…。

一息付いた所で、リビングに移動して香藤が帰るまで何か摘まめる物をと冷蔵庫に首を、

つ込み適当にな材料に目星を付けるが、岩城は余りこってりした物よりも浅利とした物が良いだろうか?

あいつも、文句は言わなだらろうとあいつが帰ってきてからでも時間は掛からないもの







乾燥機から取り出した洗濯物を畳み、各自の部屋に置きに行く。

香籐の部屋に入何気に机の上に置かれていた雑誌の表紙にデカデカと香籐の顔がアップで載っていた、

ページを捲ると香藤が出演している。

今回、幾つか在るスポンサー会社。有名な下着メーカーである。

共演者である、今売り出し中の女優、篠原結衣と香籐がベッドシーンで今回話題作の1つになっている

ため、「下着メーカーが新作を提供」と大きく取り上げている。

大胆なカットと淡いピンクと白を基調にレースを胸の周りに付いて可愛いくもあり、

大人ぽく見えてるのが不思議な感じのブラとショーツが清潔感を作り出している。

一方香藤の方は普段はボクサータイプが多いが、初めて競演した時はカットの大きく

入った下着だったのを岩城は瞬時に思い出した。

・・・・あの頃を思い出させる感じの下着を履いていた。


均整の摂れた、鍛えられた肉体美が惜しげもなく写し撮られている。

ベッド・ヘッドに凭れ長く綺麗な脚を投げ出して交差している。

女優のベッドの淵に腰を下ろした香藤が女優の頬に掌で優しそうに包み込んでいた。

岩城は其れをただちらっと見ただけで直ぐに雑誌を閉じた。





岩城はふっと小さな溜息を漏らし何時もの事と思い香藤の部屋を出た。

リビングに戻ると急に疲れが出てきた感じでソファに腰を落とす。

天井を仰ぎそして暫くしてから瞳を閉じる。

香藤は何時も岩城に安心を与えてくれている態度で言葉で積み重ねてきた時間は確かなものと。

判っている・・・・判っている・・・・のに・・・・・。





がちゃがちゃと玄関の扉にキーを差込み忙しなくドアーを開け靴の脱ぐのももどかしく、

パタパタと上がり込んで来る。

香籐の出す音にも気が付かない岩城は何時の間にか転寝をていた。

リビングに入り込んで着た香藤はソファで寝ている岩城を見詰めてぽそっと「ここ最近ん休みが,無かったからね」と岩城の

寝顔に掛かる艶やかな漆黒の髪を梳い指先から流れる。

髪の一本一本がサラサラと軽い音をたてて零れていく感じを楽しんでいると岩城はピックと身体を動かし覚醒仕出したようだ。

窓も開け放しているからそろそろ身体も冷えて来る頃だろうか。

腕を頭の上に伸ばし、背中を反らして大きく伸びをする様は正に猫科特有の身体のしなやかさがある。

香藤は、岩城の仕草の一連を見逃さないように見詰めている。

こんな姿も俺しか知らないからと垂れ目が余計に垂れている、姿も見ものであるが・・・・・。

ゆっくりソファから起き上がる岩城に香藤が訊ねる。

「岩城さん、ただいま、よく寝ていたね。夕飯済んだの?」

「うぅんー、え?香藤?・・・」

「うん、今、先きね寒くない?」

「ああ、おかえり、俺・・・・何時の間にか寝てしまったみたいだなぁ、今何時だ?」

「えっと、9時半だよ、お腹空いているでしょう?」

「あぁ、寝起きだからなぁー、空腹感はあまり・・・・感じないが・・・」

「じゃー、俺何か軽めの作るから少しだけまっててね」

「え、俺が作るさ、お前だって今まで仕事で疲れているだろう?俺は少し休んだから・・・蕎麦でもいいか?」

「じゃ俺、野菜の掻き揚げ作るよ、玉葱と人参とジャガイモ有るでしょう?蕎麦茹でている間に、掻き揚げ出来るから」

キッチンに、大きな男二人がならんで作業する姿もなかなか良いかもと香藤は思う。

「俺も何か野菜を切ろうか?」

「いいよ、俺が切るから、あっ葱切てね。後は俺が切るから」

そうこの前に疲れているのに俺のために夕飯の支度をしている時に、岩城は包丁を持つ方の右手の中指を切った事があたっから。

どうしたら切れるのかは、分からないがこれも器用な内?と、香藤に言われた事を思い出した岩城は顔を赤くして俯き黙々と、

蕎麦を茹でている深鍋に菜箸をつ込み掻き回している。







テーブルには作られた掻揚げと蕎麦が並べられた。

つゆは、熱くして、蕎麦を冷たくしてみてはと香藤の提案で岩城も興味で頷いた。

香藤は、早速作られた蕎麦に箸をのばし蕎麦軽くつゆに絡めてつるつると美味しそうに食べ始めた。

もぐもぐと咀嚼し飲み込んだ、香藤の咽喉の動きを見詰めていた時、香藤の声にはっとして瞳を戻した。

「割といけるね、いいかも、岩城さんも早く食べてみて」

「ああ、」

「どうしたの?岩城さん、?早く食べてみて、顔少し赤くない?転寝で風邪でも引いたかも?」

「いや、大丈夫だ、俺も火の傍で居たから・・・・かな」

などと、言い訳をして、岩城も食べ始めた。






先に風呂から出てきてベランダの柵に寄りかかり涼んでいた。

岩城がぼんやり夜空を眺めて「中秋の名月」も過ぎた事を思い出していた。

生まれ故郷の新潟では、家族と眺めた夜空を脳裏に浮かんだ。

「岩城さん、此処に居たの?リビングに居るとばかり・・・・気持のいい風、湯上りにいいね」

岩城の側に依り岩城の肩に頭を乗せて、香藤も夜空に眼を向けた。

久しぶりに過ごす穏やかな時間を大切にと思う二人だったが・・・・・・。

「岩城さん、そろそろ部屋に入らないと、湯冷めするよ」

「ああ、そうだな、中に入ろうか」

「岩城さん、何かあった?」

「いいや、何もないど」

岩城は、先ほどの週刊誌に載っていた香藤の姿を思い浮かべ、焼餅を妬いて事は・・・・内緒?

香藤も何となく不自然な岩城の態度に、何かを感じ取っていたが今は気付かない振りをした。

「ふうんー、まあいいや、それで」

「なんだ、変なやつだなぁー、お前は」

ベランダのガラス戸を閉めて鍵を落した。

これから、始まる、熱い時間の予感などに気づかない岩城だった。

秋の長い夜は之からが始まりなのか?


        おわり  ・9月15日

言い訳、またまたやってしまいました。山も無ければ谷も落ちも無い、駄文です。
今度はもう少しましな物を書きたいと思いますので、
「お読み頂いた皆様、御免なさい。」



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