だから、ありがとうを込めて

                                 ( 今朝、気になった・・・箇所があり訂正しました。1/28)



数日前から悩んでいた俺。




今日は、俺の最愛の人、岩城さんの誕生日・・・

以前にプレゼントを贈り過ぎて・・・怒られた事があったなーと、

頭をぽりぽり人差し指で掻きながらカレンダーと睨めっこ宜しくとばかりに唸っている。




冬の蝉の撮影が終わり、テレビドラマの撮影や岩城さんを悩ました持宗監督の映画撮影が続いている。

あの時、突然泣き出した岩城さんをただ抱締めている事しか出来なかった。

あの時は何を言っても岩城さんの心の負担が軽くなるわけでも無かったから。

まあ、後で解ったことに俺は、おしおきをさせて貰ったし・・・

そして、俺も初心に戻って・・・金子さんに付いて営業回りに出掛け頭を下げた。

その時聞えて来た言葉に・・・俺の躰が一瞬強張った。

幾ら覚悟を決めていたとしても・・・一度落ちた役者には・・・本当に厳しいのだと痛感した。

でも・・・俺は・・・芝居をしたいだけなんだけど・・・だから形振り構わず頭を下げただけで・・・

人は・・・俺のイメージに幻滅するのか?。

俺は俺なんだと・・・思うが世間では違うのか。






俺自身気付かないところで・・・

夢の中の俺は・・・仕事がしたいと足掻いていた。

強張っていく俺の躰。

それを岩城さんが抱締めて強張った躰ごと総てを解かしてくれるような温もりと気持ち解きほぐす

甘い香に包まれて俺は・・・弛緩した。




そんな気持ちを込めて俺は岩城さんに贈りたい。

俺の大好きな人に何が良いだろう。

先ずは・・・今夜の食事の用意の為に買出しをしないとね。





某有名な百貨店の中を何となく歩いていると宝飾店で・・・悩んでいるとふっと。

『香藤・・・俺の為に無理をするなよ! その気持ちだけで嬉しいから』と

数日前に言われた岩城の言葉が頭の中を過ぎった。

岩城が俯いたまま言った言葉が照れくさそうにしているから俺は、そのまま腕の中へ抱き込んだ。

解っているから・・・俺が今、自由に出来るお金が・・・余り無い事を差知っての岩城さんの言葉。

でもね・・・・岩城さん。

何かを気持ちを込めて送りたいからね。わかってね。

香藤がガラスケースにへばり付いて見ていると店員が、目敏く香藤に話しかけてくる。

「お気に召したのがありますか? 宜しかったら手にとって見ませんか?」

「えっ?・・・俺?」

「ええ、ご自分がお付けになるのですか? それともプレゼントですか?」

「あ、・・・はい、プレゼントですが・・・」

「何か、お気に召しましたのがありますでしょうか?」

俺は、ケースの端から端までを見て、

「うんー・・・・じゃあのブレスレット横に有る物を・・・・」

「こちらですか?」

「ええ、それ包んでください」

「はい、畏まりました」






買い物袋を片手にぶら下げていた荷物をダイニングテーブルに置くと、直ぐに二階の寝室に入り、

サイドテーブル上には小さな花籠を置き其の下の引き出しに小さな包みを入れると、

いそいそと新しいシーツを引き出して交換した。

「この部屋はこれでよしと」

満足げにしている香藤の顔がある。




何時もは洋食だから今回は和食をと香藤は腕をふるう。

戻しておいた椎茸を刻み煮付けていく。

次々に手早く段取りよく作業をしていった。



総ての料理を仕上げて香藤はやっと自分の為に紅茶を淹れた。

ソファーでゆったりと紅茶の香を楽しんだ。


香藤が、うつらうつらしかけた時に岩城の声が耳元に届いた。

「香藤?・・・唯今。 今、帰って来たよ」

「えっ?・・・・い、岩城さん、お帰りなさい。俺、今・・・・」

「お前、疲れたのか?」

心配そうに声を掛ける岩城である。

俺の為にまた無理をしたのかと心配げな岩城の顔を見て香藤は首を振りながら、

「うんん。疲れていないよ。只何となく此処に座っていたら気持ちよくなって」

「岩城さん、食事が出来ているからね。今日は岩城さの誕生日だから・・・ね。俺、頑張らないとね」

「何がね。なんだ?」

「いいからいいから、岩城さんは気にしないでね。今日、お酒・・・・日本酒だよ」

「珍しいな、日本酒・・・まあこの季節がら熱燗で一杯なんてのもな」

「うん、でしょう。何時も岩城さんの誕生日だとワインか洋酒でしょ、だから今回ね和食に合うように日本酒だよ

早く、テーブルに座って」

「ああ、手を洗ってくるから・・・お酒を緘して置いてくれ。直ぐ来るから」

「ハイ」

こんな小さなことでも嬉しく思う岩城と香藤だ。

何よりも愛しい人と同じ時間を過せる事に感謝の気持ちが生まれる。

何よりも大切な人だから、励ましあったり、時には厳しい意見を言うが、相手を思うからこそだ。




香藤の心尽くしの手料理を前に岩城は嬉しそうに微笑んだ。

「岩城さんお誕生日おめでとう」

「ああ、ありがとう香藤」

照れながら言う岩城の頬が薄らと赤くなった。

素直に言える言葉が嬉しいと思う岩城であった。

もう、いい加減な年だからと思うのもあるが、こうしてふたりで祝うのも悪くないと思えるようになったのも香藤の

お蔭かもと思う岩城である。

テーブルに並んだものは、チラシ寿司と茶碗蒸し、小松なのおしたし、

早くも春の香を運んだふきのとうの酢味噌和えアサリのお澄まし等であった。

「香藤・・・こんなに・・・大変だっただろう?」

「うんん、そんなこと無いから、楽しかったよ、岩城さんの美味しそうに食べてくれる顔を思いながら作るのはね」

「どれも、これも美味しいよ。ありがとう・・・お前も・・・・大変なの時なのに・・・・・」

「何言ってんの!岩城さん。それと、これは別なの!解っている? 岩城さん」

「解っている・・・よ。 香藤」




食事を楽しんだ後、ソファーで寛ぎ、お風呂を済ませたふたりは、

「岩城さん、早く、寝室に行こう!」

「慌てるな、香藤」

「だって・・・」





「ほら、此処に座って」と指を指す香藤に岩城は自分のベッドの上に座ると、

「はい、これ、プレゼント」

岩城の掌に渡された小さな箱にシルバー色のリボンが掛ってある。

掌に乗せられた箱と香藤の顔を交互に見て岩城は、

「香藤・・・・・・」

「岩城さんが心配するほど高価ではないからね」

「冬の蝉の映画撮影が終わり・・・俺はアメリカへ行ったし・・・今仕事も・・・雑誌のインタビュー、テレビでの

トーク番組しか仕事をしていないけど・・・この前・・俺・・・のこと・・訳も聞かずに・・・甘えさせてくれたでしよう・・・

あの時・・・凄く嬉しかったから・・・・その時の気持ちを込めて・・・岩城さん余りタイピンしないけど・・・

シンプルだけど・・・・岩城さんが1月生まれだからガーネットとアルマンダインとガーネット原石

なんだって、そして言葉が熱愛・友愛・真実と実行力の勝利だって、教えて貰ったんだ・・・

岩城さんそのまんまでしょう」

「俺、まんまって??・・・」

「ほら、岩城さんも・・・俺より前に・・・夜ベッドで突然泣き出した後で・・・立ち直ったでしょうね!

持宗監督に別れろともで言われたとこ・・・で、岩城さん物の見事に・・・吹っ切って・・・役作り出来たんでしよ・・・

だから・・・直ぐに頼んで仕上げて貰ったんだ。買い物をしている間にお店にたまたま職人さんが来ていたんで

頼んだら・・・本店にありますから・・・持ってきますて、言われたの・・・だから・・・此れからの岩城さんを守って

貰えるかもってね。 でも・・俺が一番岩城さんを守りたいから・・・」

香藤の思いを込められたタイピンを手に、岩城は俯いたまま話を聞いていたが、掌に零れ落ちた雫を香藤は優しく

岩城の手を持ち上げて雫ごと口付けた。

「・・・・・あ、ありがとう・・・香藤・・・」

「俺のほうこそ・・・・岩城さんに助けて貰っているから・・・だからこそ、ありがとう・・・」
















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やっと形に成ったかな?・・・

兎に角、岩城さんお誕生日おめでとう。

今朝、気になった事があり・・・箇所があり訂正しました。

皆さんに何回も書き直して不愉快な思いをさせてしまいました。

済みませんでした。

    2007/1/27


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